手形と現金、受け取りで得をするのはどちら?
支払い金を受け取る際に、約束手形と現金であれば、どちらで受け取る方が得をするのでしょうか?
こちらでは、様々な面から手形と現金の受け取りについて検証しています。
現金支払いを条件とした値引き交渉があった場合
支払い金を約束手形として受け取った場合、手形割引を利用しなければ、すぐに現金に交換できる訳ではありません。
そのため、現金で受け取った方が良いという考えの方もおり、「現金で支払う代わりに値引きをしてほしい」という交渉を持ちかけられることもあるようです。
例えば、5%の値引き交渉をされた場合、手形割引を利用するのとどちらが得をするでしょうか。
割引手形の手数料を支払う方が得をする
現金支払いでの値引き交渉があった場合、例えば2,000万円の代金だったと考えると、損をする金額は次のようになります。手形割引は90日期日、割引料5%の場合と仮定します。
現金で受け取って値引きをした場合
値引き額:2,000万円 × 5% = 100万円
受取総額:1,900万円
手形で受け取って割引を利用した場合
割引手数料:2,000万円 × 5% × 90日 ÷ 365 = 約25万円
受取総額:約1,975万円
「割引手数料がかかる」と考えると、値引き交渉に応じた方が得をするイメージがありますが、実は割引手形を利用した方が75万円も多く手元に残るという結果となります。
預金を担保に手形割引を利用する際の銀行金利
手形割引を利用する際には、銀行を利用する方法と、手形割引の専門業者を利用する方法の2つがあります。
銀行への定期預金を担保として手形割引の枠を所持していた場合、割引枠が余っていたとしたら、銀行での割引手形利用は大幅に損をしてしまっている可能性もあるでしょう。
銀行の割引手形を利用していたら現金の方が得
銀行の定期預金1,500万円を担保にし、4,000万円の割引枠を持っているものの、割引枠が2,000万円余っていたと仮定します。その場合、定期預金で受け取れる利息と、割引枠の支払い利息を計算すると次の通りです。
割引枠による支払利息(金利3%の場合)
2,000万円 × 3% = 60万円
定期預金による受取利息(金利0.1%の場合)
1,500万円 × 0.1% = 1.5万円
実質的な金利
60万円 - 1.5万円 = 58.5万円
2,000万円 - 1,500万円 = 500万円
58.5 ÷ 500 = 8.54%
このように、銀行の支払利息と受取利息を総合的に考えてみると、500万円の割引手形に対して8.54%の利息が生じていたことになります。
金利面では銀行よりも割引手形業者が有利
上記のように、銀行で担保をつけた割引枠を設定している場合、大きな金利を払っている可能性もあります。また、銀行では割引枠の総額に対して保証料がかかってくるため、コスト面で問題です。
その点、割引手形業者では担保も必要なく、割引枠も存在していません。また、保証料もかかりませんし、業者の割引率の方が、上記の計算で出した金利よりも低くなる場合がほとんどです。
トータルで見ると「業者を利用する手形受取」が最も得
ご紹介してきた2つの例をトータルで判断すると、値引き交渉による損失もなく、コスト面でも優れていることから、「割引手形業者を利用した手形受取が最も得をする」方法だと言えるでしょう。
割引手形を利用すれば期日前に現金を受け取れるので、現金を受け取ることと大差はありません。また、分割手数料を支払えば、電子手形の一部だけを現金化することもできるため、柔軟な資金繰りが実現するでしょう。