電子手形(電子債権)とは
ここでは仕組みや割引方法など電子手形(電子債権)に関する基本的情報を紹介します。
電子手形とは何か、割引はできるのか
電子手形あるいは電子債権と呼ばれるものは単に紙の手形を電子化したものではなく、従来の手形や売掛債権の問題点をクリアした新たな金銭債権といえます。そのため、電子記録債権とも呼ばれています。
紙の手形との比較でいえば、以下のようなメリットがあります。
手形 | 電子手形 |
---|---|
作成・交付・保管などのコストがかかる | 電子データのやりとりなので管理コストが安価 |
紛失・盗難などのリスクがある | 記録期間が記録原簿を管理するのでトラブルが起きにくい |
分割はできない | 分割も可能 |
なお、電子債権記録機関は主務官庁が監督する専業会社で一種の登記所的存在。そのため取引の安全性や可視化もしっかりしているといえますし、割引も可能です。
電子手形の種類や特性
電子手形は現在4種類が流通していて名称と管理主体は以下になります。
- 電ペイ/みずほ銀行
- 電手/三菱東京UFJ銀行
- 支払手形削減サービス/三井住友銀行
- でんさい/全国銀行協会
上の3つはメガバンクがグループ企業や顧客企業の取引などに使われることがほとんどで、系列のファクタリング会社が現金化もしてくれます。
一方、でんさいは全国の金融機関が参加していて流通性の高さがメリット。利用するにあたってはネットバンクの開設が必要で、取引銀行のネットバンクを通じて、でんさいネットへアクセスし、やりとりをすることになります。
でんさいを利用する場合、以下の特性を知っておくといいでしょう。
- 紙の手形と違って分割支払ができる
- 支払で使う場合は相手先にでんさいを受け取れる環境が必要
- 割引には自分側の与信審査が必要で現金化できないこともある
例えば、電子手形を急いで現金化したい時、取引銀行で断られたら、電子手形割引の専門業者に依頼するといいでしょう。
こちらは振出人で現金化を判断しますし、1時間以内の審査で当日振込してくれるところもあります。
電子手形を利用する際の流れ
電子取引は発行から現金化まで、通常の紙の手形とは全く違ったプロセスを取ります。
電子手形の発行
電子手形は通常の紙の手形とは違い、インターネット上のサイトから取引が行われ、振出人企業、受取人企業が代行会社である金融機関と契約を結んでから行われます。
契約締結には手数料は不要ですが、印紙代、商業登記簿謄本、印鑑証明書などが必要になります。電子手形が振出人により発行されると金融機関からその旨が受取人企業にメールやファックスで通知されます。
電子手形の現金化
電子手形を満期まで保有していた場合は、金融機関から受取人企業にその旨お知らせがメール又はファックスで届き、指定された金融機関に所定の手数料を差し引かれた金額が受取人企業の口座に振り込まれます。
なお振出人企業は満期までには発生させた電子手形の決済が必要となるので、決済に必要な資金を指定口座に入金する必要があります。
また電子手形を満期前に割引して資金化する際は、受取人企業から金融機関にその期日前資金化の依頼をします。記録機関から電子記録債権の「登記所」である電子記録機関で譲渡が確認されると受取人企業へその旨通知し、措定の手数料が差し引かれた金額が受取人企業の口座に振り込まれます。
受取人企業は電子手形が発生したその日から資金繰りに合わせて割引や譲渡(裏書)に使用することができます。
電子手形のメリット
コストの削減
電子手形はペーパーレスで通知はメールやファックスで行われますので、郵送代などにかかる費用がありません。
印紙税の課税対象にもなり従来の手形に比べ銀行での金利が低いなどコストカットに有効です。
書類関係の保管も従来の紙だとそれなりの保管コストが必要でしたが、電子手形ならこうしたコストも削減できます。
事務負担の軽減・効率化
従来は満期日になると銀行や専門業者に出向いて取り立て依頼をしてましたが、電子手形では自動入金になります。
手形割引の際も従来は銀行や専門業者に出向いて手続きを行っていましたが、電子手形ではすべてがメールやファックスでのやり取りになり、事務にかかる労力、時間が大きくカットできます。
電子データなので手形残高や期日管理も効率的にできます。
セキュリティーの向上
従来の紙の手形だと紛失したり、盗まれたり、偽装される危険性があり、厳重に管理する必要がありました。
しかし、電子手形ならこうしたセキュリティーの問題は解決されます。記録原簿に債権・債務の関係が可視化されるので、債権の二重譲渡リスクの回避も可能です。
ただ、すべての作業をパソコンで行いますので、パソコンのセキュリティー対策はしっかりと気配りする必要があります。パソコンでログインする際の個人認証や不正アクセス防止の対策は必須です。
電子手形のデメリット
電子手形のメリットだけでなく、デメリットについても把握しておきましょう。デメリットを解消するための考え方についても紹介します。
取引先が対応できない場合がある
取引先が電子手形に対応しておらず、移行できない場合があり、それがデメリットとなる場合があります。
取引先の一部だけが電子手形に移行できない場合、通常の手形と電子手形の両方を管理することになるため、手間が増えることが懸念されるのです。
とはいえ、現在では多くの企業が電子手形に対応しており、このようなケースは減ってきています。また、一部の手形を電子手形に移行するだけでも、経費削減などのメリットは得られますから、検討の余地は十分にあるでしょう。
電子手形に移行する手間がかかる
電子手形に移行するまでの手間そのものをデメリットと感じる場合もあるでしょう。電子手形に移行するにあたって取引先に説明が必要な場合は、なおさら大変に感じるかもしれません。
この点は、でんさいネットが提供している導入サポートサービスを活用することで解消できるでしょう。でんさいネットが取引先に講師を派遣し、電子手形に関する説明会を開くというサービスなどを提供してくれるので、移行の手間を軽減できます。
電子手形なら多様な資金調達が可能に
電子手形は従来の紙の手形とは違い、多様な資金調達が可能になり、受取人企業の経営にも大きなメリットがあります。
手形の分割割引
従来の手形割引の場合は手形の全額が割引されていました。つまり10万円の手形だと10万円分が割引され、金利手数料を引かれた金額が受取人企業に入金されていました。
しかし、電子手形では手形の1,000円以上、1円単位で分割割引が可能になります。例えば10万円の手形のうち、3万円を分割割引し、残りは満期日に受け取ることも可能です。
必要な金額だけ割引することができ、金利手数料もその分抑えることができるなど、無駄のない効率的な資金調達が可能です。
手形の分割譲渡
従来より受取人企業は自分が受け取った手形をほかの会社などに譲渡(裏書)して資金化することが可能でしたが、電子手形でも譲渡は可能で、さらに分割して譲渡することも可能です。
例えば100万円の手形だとA社に30万円、B社に20万円、C社に10万円を分割譲渡することができるのです。この際、残りの40万円は割引して受取人企業が受け取ることも可能ですし、満期日まで置いておくことも可能になります。
定期割引、都度割引
電子手形の割引には定期割引と都度割引の2つの制度があり、受取人企業は資金繰りなどの都合に応じて選ぶことができます。
定期割引は手形の振込企業と割引希望日を事前に登録すると、手形振出日と同日付で毎回自動的に割引が行われる方式です。所定の手続きを1度行えば、以後は割引依頼をする必要が無いので、事務手続きコストをカットすることができます。
都度取引は割引を希望するたびに申し込みをする制度です。必要なお金だけ割引を行うので、無駄のない機動的な資金繰りが可能です。
電債の割引が利用できる業者3選
電子記録債権の割引を提供している、主な業者を3つ紹介します。
日証
株式会社日証は、利率の低さについて優位性のある業者です。利率は審査結果によって異なるので一概にはいえませんが、「利率の上限が低い」ということがポイントです。
利率の範囲は「年利3~13.5%」で、高くても13.5%までという条件になっています。実績がまだないといったような理由で信用力が低く、審査で良い利率を提示される可能性が低い場合、このように上限が安く設定されている業者は魅力があるといえるでしょう。
インターネットを使ったサービスが充実していて、パソコンやスマホから簡単に割引の手続きができます。審査結果の回答までの時間は、最短で30~60分です。
大黒屋
株式会社大黒屋は、電債割引・手形割引などの企業金融を専門とする業者で、年間で約1万5000社から利用されている(2019年10月公式HP)という実績があります。
利率の範囲は年利2.8~14.8%で、下限が「2.8%」と低く設定されていますから、優良企業や大企業で、下限の利率が期待できる状況であればメリットがあるでしょう。
審査結果の回答までの時間が、最短で15分という早さも魅力です。
塚越商事
塚越商事株式会社は、創業100年を超える歴史と、実績のある業者です。手形割引の専門業者として知られています。
電債割引も提供していて、利率の範囲は年利3.6~13.8%となっており、以下のように明確に区分されています。基準が公開されていることで、事前に自社の利率の目安を確認できるという点がメリットといえるでしょう。
- 上場銘柄・店頭銘柄:3.60~6.00%
- 非上場銘柄(優良銘柄):6.00~8.00%
- 非上場銘柄(その他の銘柄):8.00~13.80%
まとめ
電子手形は通常の紙の手形にはない、債権発生に伴うコストや手間を省くといったさまざまなメリットがあります。
手形の割引にも通常の手形にはないメリットがあり、資金調達の面でも大変優れています。
業務の効率化を求める経営者の方や機動的な資金調達をスムーズに行いたい経営者の方には特にご利用をおすすめします。